エンタメあれこれ

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白河夜船 ズルい男を愛してしまったふたりの女性の温かな魂の交流

偶然にも昨日から死にまつわる作品を立て続けに見てしまった…。ちょっと、しんどい。


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そしてこの作品のヒロイン・寺子といい、昨日のチワワちゃんといい、やはり他人軸でひたすら受け身で生きていると破滅もしくは自滅に向かってしまうんだなあ、、と痛烈に思い知らされた。

 

さいわい寺子の場合、植物状態にある不倫相手の妻から摩訶不思議な形で救いの手を差しのべられたから良かったものの、もしあの状態が続けば、彼女にも最悪な結果が待っていた可能性が高かっただろう。

 

不倫にもいろいろある。
この作品の寺子と岩永の場合、本来不倫に走るような人間ではなかったんじゃないかなあ、と思う。あ、「ナラタージュ」の二人の場合もたぶん、そう。

 

だけどどちらも妻に異変が起きてしまったことで、幸福のバランスが崩れてしまった。そしてそれに呼応して善良だった男たちが、その苦しさのあまり、道を踏み外してしまう。そしてそれを受け入れてしまう同じく善良で母性溢れる優しい女たち。

 

でも、「ナラタージュ」の泉ちゃんは、強かった。結局断腸の思いで自力で断ち切ることができたからだ。先生の苦しみをこれ以上一緒に背負うことはできない、と自分から別れを切りだせた。

 

けれどこの作品の寺子は違う。不倫への不安や罪悪感に蝕まれていくさなか、無二の親友が自殺をしてしまうというさらなる悲劇に見舞われてしまう。もう彼女には岩永の苦しみや寂しさを受け止めるエネルギーがないのだ。でも優しい彼女はそれを岩永に伝えることすらできない。

 

寺子が今後どんな決断を下すのかは、わからない。(たぶん岩永からは別れを切り出すことはできないだろう)ただ唯一の救いは、岩永の妻が本当に本当に寛容で優しい女性だったということ。

不倫に走った夫を責めるわけでもなく、相手の女を恨むわけでもなく、ただ寺子の現状を見かねて「私のために苦しめてしまった」と、心を痛め必死に救おうとする。そんな女性、いる!?…ズルくて八方美人な、”同じ男”を愛してしまった女性への溢れんばかりの思いやりが胸に刺さる。

 

そんな温かな想いを受け取った寺子は、きっとどんな選択をしても、生き延びることが出来るだろう。寺子も同じく寛容で優しい女性だから、これから先もきっと苦しい。でも岩永の妻はきっと夫同様、寺子の行く末も心配しつつ見守ってくれるはずだから。

 

※白河夜船とは、知ったかぶりをすること、または、ぐっすり眠りこんで何が起こったか知らないことのたとえ(諺)。

↑この原作本を読んだときは、添い寝やさん、という職業が新鮮だった。だけど今やソフレなんて言葉がフツーに流布する世界。…時の流れの早さや社会の変化を感じてしまうなあ。。